人手不足企業が知るべき育成就労の分野制限
全国的に人手不足が深刻化する中、外国人材の採用を検討する企業は年々増えています。特に製造業、介護、農業、外食、宿泊、建設、食品製造など、地域の生活や産業を支える分野では、採用難が経営課題に直結しています。
そのような中で注目されているのが、技能実習制度に代わって始まる育成就労制度です。厚生労働省は、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的とした育成就労制度が令和9年4月から施行されるとしています。
これまで技能実習制度を活用してきた企業にとって、制度変更は単なる名称変更ではありません。今後は、外国人材を「一時的な労働力」としてではなく、一定期間をかけて育成し、特定技能などにつなげる中長期的な人材戦略が求められます。
育成就労はすべての業種で使えるわけではない
育成就労制度でまず確認すべきなのは、自社の業務が導入できる分野に該当するかという点です。
技能実習では幅広い職種・作業で受け入れが行われてきましたが、育成就労では、制度の目的がより明確に「人材育成」と「人材確保」に置かれます。そのため、今後は分野ごとの運用方針や基準に沿って、受け入れの可否を判断する必要があります。
出入国在留管理庁では、育成就労制度の制度概要や関係法令に加え、介護、ビルクリーニング、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業など、分野別の基準や告示が順次掲載されています。
つまり、今まで技能実習で受け入れできていたからといって、今後も同じ形で導入できるとは限りません。分野によっては、育成就労の対象にならない、または要件が厳しくなる可能性があります。
導入できる分野・できない分野の確認が重要
人手不足に悩む企業が最初に行うべきことは、「外国人材を採用したい」という希望だけで動くことではなく、自社の業種・職種・作業内容が制度上どこに当てはまるのかを確認することです。
たとえば、同じ食品関連でも、飲食料品製造業に該当するのか、外食業に該当するのか、あるいは給食事業として別の整理が必要なのかによって、確認すべき制度や要件は変わります。
また、製造業でも、単純に「工場だから対象」と判断するのは危険です。実際の作業内容、育成計画、技能評価、受け入れ体制などが制度に合っているかを見なければなりません。
特に地方企業では、慢性的な採用難により「すぐに人がほしい」という状況も多いはずです。しかし、制度に合わない形で準備を進めてしまうと、申請段階でつまずいたり、採用計画そのものを見直すことになったりします。
外国人材採用は地方創生にもつながる
育成就労や特定技能の活用は、単なる人手不足対策にとどまりません。地域産業を維持し、地方創生を進めるうえでも重要な選択肢です。
地方では、若年人口の減少や都市部への人材流出により、事業継続が難しくなっている企業も少なくありません。外国人材が地域で働き、生活し、企業や住民と関係を築くことは、地域経済を支える力になります。
そのためには、企業側にも「採用して終わり」ではなく、共存共生の視点が必要です。住居、生活支援、日本語学習、職場内コミュニケーション、宗教・文化への理解など、受け入れ環境を整えることで、外国人材の定着率は大きく変わります。
人手不足を解消するためだけの採用ではなく、地域に根づいて活躍してもらう仕組みをつくることが、これからの外国人材活用では重要です。
今後導入が難しくなる前に準備すべきこと
育成就労制度は、令和9年4月の施行に向けて、制度概要、関係法令、分野別運用方針、運用要領などが整備されています。厚生労働省も、制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領を掲載していると案内しています。
今後、対象分野や受け入れ要件がより具体化されるにつれて、企業には早めの情報収集と準備が求められます。特に、現在技能実習生を受け入れている企業や、これから外国人材採用を検討している企業は、次の点を確認しておくべきです。
まず、自社の業務が育成就労または特定技能の導入できる分野に該当するか。次に、現在の受け入れ体制が新制度の基準に合っているか。そして、外国人材を育成し、長期的に活躍してもらうための社内体制が整っているかです。
制度変更を待ってから動くのではなく、今の段階で自社の可能性と課題を整理しておくことで、施行後の採用活動をスムーズに進めやすくなります。
まとめ:人手不足対策は早期確認がカギ
技能実習から育成就労への移行は、人手不足に悩む企業にとって大きな転換点です。今後は、外国人材を導入できる分野・できない分野を正しく把握し、自社に合った制度を選ぶことが重要になります。
分野によっては、これまでと同じように受け入れができない可能性もあります。だからこそ、早い段階で制度情報を確認し、必要に応じて専門家や支援機関に相談することが大切です。
外国人材の採用は、人手不足の解消だけでなく、共存共生の職場づくりや地方創生にもつながります。これから技能実習、育成就労、特定技能の導入を検討する企業は、まず自社がどの分野に該当するのかを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。


